bloody mary
被虐待児は、自分に危害を加える親を憎みきることができないのだという。
葛藤を抱えながらも親を慕い、必死で親の愛を求めるのだという。
親の正当性を見出だすために暴力を受けるのは自分に非があるからだと思い込み、自信を喪失し、極端に自己愛が欠如してしまう。
おそらく、この少女も…
「オヤジにそー言われたか?」
マリーの低い問い掛けに、少女は何も答えなかった。
俯いたまま、微動だにしなかった。
「…
まぁ、いいケド。」
マリーは軽く溜め息を吐きながら、髪を掻き上げた。
「オメェがそう言うなら、オメェにゃ価値がねぇンだろ。」
「マリー!!」
アンジェラが青ざめて悲鳴を上げるが、マリーは止まらない。
手を伸ばし、握り潰せそうな細い肩を強く掴む。
痛みに覚醒を促され、微かに光を取り戻した少女の瞳を、マリーは真正面から見据えた。