bloody mary
「おまえがナニをされて、ナニを言われてきたかなんて、俺は知らねぇし、興味もねぇ。
だが自分の『価値』なんてモンは、テメェで作って、テメェで決めるモンだ。
誰かに押しつけられるようなモンじゃねーンだよ。」
虚ろだった少女の目が、ナニカに気づいたように大きく見開かれる。
だが少女が口を開く前に、マリーは掴んでいた肩を放して立ち上がった。
「おまえは自由だ。
父親を信じて家に帰ってみるのも、おまえの自由。
価値のナイ人生に終止符を打つのも、おまえの自由。
好きにしろ。」
言い切るなり、少女に背中を向けて歩きだしたマリー。
ハラハラしながらゲストルームの前に突っ立っていたアンジェラを強引に部屋に押し込み、扉を閉じようとして…
一度だけ、振り返る。
「いいな。
おまえが、自分で、決めろ。」
パタン…
自分と少女を残し、無情にも閉まったドアを、アンジェラは茫然と見つめた。
マリーのやりたいコトは、よくわかる。
少女に、おそらく今まで一度も手にしたことがないだろう決定権を与えて。
彼女の意思を尊重し。
虐げられ、感情さえ支配され続けた少女に、人としての尊厳を教えようというのだ。