bloody mary
アンジェラはもはや半泣き。
硬直していた少女は、とうとう吹き出した。
窓から差し込む夕陽に染まった顔で、マリーも唇の端だけを歪めて笑った。
いつも通りの皮肉そうな笑顔。
だがどこか優しげに見えたのは気のせいだろうか。
「俺はマリーだ。
コイツはアンジェラ。
知ってるよな?
おまえは?」
冷静さを取り戻したマリーが、少女に問い掛けた。
「あ… 菜」
「俺もアンジーも、元々の名前じゃない。
おまえも好きに変えてイイ。
…おまえの名は?」
一言付け加えて、再び少女に問い直す。
楽しかったことも嬉しかったことも、少ない15年だっただろう。
それどころか、思い出したくもない記憶ばかりかも知れない。
なかったことにはできない。
だが、閉じ込めて。
蓋をして。
新しい自分で前に進んでいけるなら…
しばらく考え込んでいた少女は首を傾げて口を開いた。
「でも… 私…
やっぱり、菜々(ナナ)デス。」