月灯りに照らされて
薫は、日々秘書として慌ただしく過ごしているが、今はまだ、
勉強中の身なので、意外に気楽なものだ。

私生活も、普通に生活しているが、昨夜、珍しく蓮から薫に連絡が入った。

「薫、悪いが、明日、付き合って欲しいんだが・・・。」

「どこに、行くんだ?」

「明日、陽だまりのコンサートがあるんだが、一緒に行ってくれないか?」

「俺が!・・・・なんだ、またなのか・・・?」

薫は、嫌な予感がしていた・・・。

「あぁー。でもこれ以上は、付き合えないからな・・・・」

蓮は、陽だまりのボーカルのひとみとセフレとして付き合っている。

セフレといっても、蓮の場合、二人も三人も同時にセフレがいるわけで
はなく、常に一人だけにしてある。そのせいか、大概の女は、自分一人
だと思うと、勘違いして彼女気取りが出てくる。終いには、独占欲も
出てきて、自分は彼女だと勘違いし始める。

蓮は、表向きは、イケメンで優しくて・・・・という風に見られているが
実は、結構鬼畜で、人から束縛されるのを嫌がり、恋人でもないのに
彼女気取りされるのを、極端に嫌う。

それに、橘兄弟は、小さい時から、大人達の、特に政治家の裏
、表をしっかり見て育ってきているせいか、いつも自分の中に
冷静な自分達が存在する。感情で走ることは、殆どなかった。

だから二人とも、女性関係についても、熱烈に好きで!ってことは
今までになく、また、そんな、気持ちになるほどの女性に出会った事
なかった。

結婚は、当然、政略結婚しか選択がなかった、。

橘にとって、利益のある結婚のみ許される。蓮は、政治家にならなく
ても、別の形で、橘に利益をもたらせなくてはならない。

親父の政治に対する姿勢は尊敬するが、橘の家の事になると、
家というものに、とても固執している。

そんな、橘の家に対する考え方は、正直、反感を覚えるが、
これも橘の家に生まれた、薫達の運命だと諦めていた・・・。



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