月灯りに照らされて
陽菜が翠に見せたのは、交通遺児等の育英会のパンフレットだった。

そこには、育成基金を募ったり、また親を事故で無くした子供達の
心のケアに当たる『ファシリテーター』と、呼ばれる人の養成講座
の案内もあった・・・・。

私は、両親が亡くなった後、優しい祖父母が居たので、恵まれていたが
私のような境遇の子供ばかりじゃないのを、このパンフレットを見て
痛感した。

私の心に、衝撃が走った・・・・。

そうだ、私が少しでも役に立つのなら、この養成講座に通って
子供達の役に立ちたい。

そう強く思った瞬間だった。

「ありがとう、陽菜、私、これやってみるわ。私でも役に立てるのなら
 頑張ってみるわ!」

思わず、陽菜に抱きついた。

それから、私は、育英会に連絡をとり、卒業するまでの間に
ファシリテーターの勉強をした。

3月に入って、いよいよ卒業式を終えれば、4月から社会人だ。
そう思った矢先、東北で、大震災が起こった。

最初、何が起こったのか解らず、丁度陽菜が一緒に居たので
テレビを付けたら、津波が、家や車をどんどん飲み込んでいく様
が流れていた・・・・・。

ショックだった・・・テレビに向かって、陽菜と逃げて!と
いっても声は届かず、呆然とそのさまを見ているだけだった。
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