月灯りに照らされて
事務所には、翠より、3つ先輩の、高畠 歩、事務所唯一の
男性で、あとは、2つ上の、成田 友香、そして午前中のみ
南条の妻の茜が、従業員の給与や福利厚生を担当している。

何分、扱っている案件も多く、仕事内容も多種多様だった。

翠は、日々仕事に追われ、最初の3か月は、休みになると、
ぐったりと寝ているだけの生活だった。

それでも、事務所の皆は、翠に良くしてくれて、たまに、皆で飲みに
いく事もあった。

今日は、久しぶりに何もない金曜日で、事務所の3人と弁護士の
菱川さんと4人で、事務所の近くの居酒屋に来ていた。

「「「「かんぱーい」」」」

「あぁー、美味しいわね!やっぱり、仕事の後のビールは
 美味しいわ!」

「クククッ、友香は、親父みたいだな・・・」と、歩さん。

歩さんと友香さんは、付き合っていて、二人とも美男美女カップルだ。

「ところで、翠ちゃん、仕事は、慣れた?」と、菱川さん。

「いえ、毎日、新しい事ばかりで、覚えるだけでいっぱいです」

「まぁー1年目は仕方ないよ。ところで、翠ちゃんって、彼氏
 いるの?」

「ブッハッ・・・ゲホン・・・なんですか急に!」

急に話を振られ、思わず吹き出してしまった。

「だって、皆、気になっているよ。その指輪!」

「あぁーこれですか・・・。内緒です。フフフッ」

「あぁー、煙に巻こうとしているわね。翠、そのうち追及するわよ!」

皆、どうして、人の恋バナが好きなんだろう・・・・

翠にとって、まだ薫は過去にはなっていないので、話をするのが
辛いのだ。
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