月灯りに照らされて
薫さんの口から出た名前は、私の名前じゃなかった・・・・。

いたたまれずに、薫さんの部屋を後にした・・・。

あの手帳、ペン、みどり・・・・・あー、解んない!

私は、回らない頭を抱えながら、また薫さんに問いただす勇気も
なく、相変わらずすれ違いの日々を過ごした。

そんな中、政局は、揉めに揉め、結局解散してしまい、また選挙が始まる。

私は、橘 薫の妻として、選挙運動の手伝いに入らなくてはならない。

私は」、気合を入れて、少しでも薫さんの役に立てるよう、頑張ろうと
思った。

*************************

「皆さん、初めまして、橘 薫の妻の麗華です。どうぞよろしく
 お願いします。」
パチパチパチ・・・・

皆さんから拍手をもらい、一人で、ハイテンションになりながら
秘書の川崎さんに、何をしたらいいのか聞き、頑張って与えられた
仕事をした。

慣れないせいか、皆さんに迷惑をかける事もあったが、自分では
頑張って仕事をしていた。

ある時、事務所で、川崎さんと後援会会長の奥様の後藤さんの
話し声が聞こえた。

『川崎さん、今回は、翠さん来ないんですか?』

えっ、みどりさん・・・・聞き耳を立てた・・・。

『彼女は、あの時大学生で、時間があったから、来てくれていたんです
 今回は、来ませんよ』

『えっー来ないの。彼女、本当に良く気が付いたし、あんなに美人なのに
 人一倍、汚い仕事でもなんでもして、私達、おばちゃんたちの、アイドル
 だったんだけど・・・・翠ちゃんが来ないんじゃー、楽しみがないわ!』

『何言ってんですか、麗華さんが居るじゃないですか』

『彼女は、可愛いかも知れないけど、翠ちゃんと違って、役に立たないのよ』

えっ・・・・・・役に立たない・・・・・・ショックだった・・・。
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