月灯りに照らされて
こっそりと、その場を離れて、外で気分転換していたら、駐車場から
薫さんと工藤さんと三枝さんが来るのが見えた。

泣き顔を見せたくなくて、陰に隠れていたら

『あー、今回は、なんでこんなに疲れるんだ』と、三枝さん。

『それは、愛のドリンク剤とはちみつレモンがないからだろ』と、工藤さん。

『なるほど・・・・翠ちゃんどうしているかな・・・』と、三枝さん。

『お前ら、いい加減にしろ、翠は、今回はいないんだ』

『そうだよなー誰かさんが、捨てたんだもんなー』また三枝さん。

『おい、一樹、止めろ。薫を煽ったところで、しょがないだろ
 それに、一番後悔しているのは、薫なんだから・・・』

『翼、お前は良く平気でいられるよな。俺は、今でも翠ちゃんが
 薫の側に居てくれれば、良いと思っている』

『・・・・・・・』

『薫、気にするな。確かに今回、翠ちゃんがいないだけで、事務所の中も
 ちょっとギクシャクしている。何と言っても、橘選挙事務所のアイドル
 だったし・・・あの子ほど、出来た子は、居なかったからな』

翼さんは、薫さんにそう言いながら、事務所へ入って行った・・・。

薫さんは、今までに見たこともないような、苦しそうな顔をしていた。

やっぱり、みどりさんて・・・・・。

胸に痞えた気持ちのまま、私は、選挙運動を手伝ったが、どうしても
すっきりしたくてその夜、薫さんが帰って来るのを待ち、薫さんが
帰って来たところを泣きながら

「私って、役に立ってないのでしょうか?」

と、泣きながら聞いたら

「麗華、初めての人は、皆そうなんだから、気にしないで」

薫さんは、優しく励ましてくれて

「薫さん、ありがとう。麗華、頑張って見せるわね!」

と、落ち込んでいた気持ちが、すっかり治っていた。

ただ、『みどりさん』の事は、聞けないままだった。

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