月灯りに照らされて
選挙が終わり、また慌ただしい日々が始まった。

年も押し迫ったある日、麗華のお父さんから、連絡を貰った。

お互い、話がしたかったので、いつもの料亭で話をすることになった。

「ご無沙汰しております。」

「おー、この度は、おめでとう。大変だったね」

「ありがとうございます。皆さんのお陰です。」

「ところで、麗華は、橘家では上手くやっているのかい?」

「はい、父や母からは、娘のように可愛がられてます。」

「ハハハッ、あれは、子供みたいな子だからな・・・・でも
 君にとっては、物足りないんじゃないのかね?」

「・・・・・・・・」

「返事がないとこみると、やはり、合わないか・・・・。
 実は、先日、麗華が家に来ただろ。あの時、選挙事務所で
 どうも皆の話を聞いたらしいんだ・・・・」

「えっ・・・・・」一瞬顔色が変わった・・・・。

「なんでも、その話を聞いた夜、君に泣きついたらしいが・・・。
 正直、男として、一番気が立っている時に、女房に泣き言
 言われると、腹が立ってくる。それは同じ男として、同情するよ。
 だがな、麗華の性格は、今さら治せない。あの子の良い所を
 出してあげられないだろうか?あれは、育った環境のせいで
 とにかく明るくしなきゃと、あの子なりに頑張って来た子なんだよ
 麗華は、家事も得意じゃないし、空気も読めない所もあるのも
 十分知っている。それを踏まえて、薫君、麗華を頼めないか・・・
 半分、押しかけて結婚したようなものだが、どうだろう、もう一度
 麗華と良く話し合ってくれないか・・・・?」


「・・・・・・解りました。ただ、今回の事で、正直、後援会の
 方たちから、麗華をもう出さないで欲しいと、言われました。
 その件もあって、今日、お話したかったんです。私は、橘の
 家の人間として、麗華さんと結婚しました。うちの母もそうでした。
 母も、政治家の妻になるのに大変、苦労しました。
 正直、麗華さんにも、橘の嫁だけではなく、政治家の妻として
 も頑張って貰いたかったのですが、今回の事で、政治家の妻には
 無理だと判断しました。もともと持った性格を、治そうと思って
 も、治せません。多分麗華さんに政治家の妻を求めると、彼女の
 良さは、失われるでしょう。そう思うと、今はどうしたらいいのか
 解りません・・・」

正直に、話した。
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