月灯りに照らされて
「麗華、申し訳ないが、離婚して欲しい」

「・・・・・・・・」

「僕の我儘で、申し訳ないが、僕には、翠、小鳥遊さんが
 必要なんだ。ごめん・・・」

「・・・・私が、嫌だと言ったら、どうしますか?」

「何度でも、頭を下げるよ。もう、翠と離れたくないんだ。
 勝手な事だと思うだろうけど、昨日ベットで横たわっていた
 翠を見た時、ショックだったのと、正直、君に殺意さえ
 覚えた・・・・。酷い男だろ。あの時、本当に、自分の
 選択が間違っていた事を、実感したんだ・・・」

「そんな・・・じゃー、何で私と結婚したんですか?」

「うちの母も、君と一緒でお嬢様だった。家柄的には問題がなくて
 ただ、政治家の妻としては、本当に苦労したんだよ。箒も
 持ったことがない人だったんだ。でも母は、しっかり政治家の
 妻をやり遂げた。だから、翠は、俺の支えになってくれるのは
 十分に承知していたが、橘の家としては、親戚から翠を守る
 勇気が俺には、なかったんだ。君なら、家柄的には問題は
 ないから、親戚から虐められる事はない。政治家の妻は、
 努力すれば、何とかなると思ったんだが、君には無理だと
 思ったんだよ。君に、政治家の妻になって貰うには、君の
 長所を全部捨ててもらうことになるからね。俺には、そこまで
 君に要求は出来ない。」

「私の性格が、変われば、薫さんと一緒に居られるんですか。
 それなら、変わって見せます。」

「いいや、それは無理だよ。それに君は、僕の本質を理解していない。
 僕は、君の王子様にはなれないんだよ。僕も人間だ。長所も短所も
 ある。僕は、翠と蓮に言わせると、イメージと180度違う
 らしい。君に僕を受け入れる、器はないよ・・・。」

「・・・・・・・・」

「君には、君に合った人と一緒になって欲しいと思っている。
 僕よりももっと幸せにしてくれる人がいるはずだから」

本当に、そう思っていた。
< 158 / 209 >

この作品をシェア

pagetop