月灯りに照らされて
翼は、いつも閉店近くまでいることが多い。

常連さんでもあるので、オーナーも翼たちの存在を
あまり気にすることなく、閉店の準備にかかる。

「翠ちゃん、お会計を、これで」と、翼にカードを渡され、
会計を済ませ、こっそりと、カードと控えを返す。

こうやって、皆が知らないうちに、支払いを済ませるやり方を
翼は、とてもスマートにこなす。

「ごちそう様でした。オーナー、美味しかったですよ。
　また、お願いします。」

「ありがとう。翼君、気をつけて！」と、オーナーがお礼を言うと

「「ご馳走様でした」」と、薫を含む三人が帰って行った。

翠が個室の後片付けをしていると、テーブルに、ペンが置き去りに
されていた。

「誰のかしら？」と、思いながら、オーナーに、「忘れ物見たいです」
と、渡すと、「翼君に連絡してみて・・」と、言われ
確かに前、翼から、名刺を貰っていて、個人のアドレスと電話番号を
聞いていたが・・・、オーナーがそのことに気が付いていたことに驚い
たが、仕方がないので、翼に電話をかけた。

「すみません、小鳥遊ですが・・・・」

「翠ちゃん、どうしたの？」

「はい、どなたか、ペンをお忘れになったみたいで・・・・。」

「おい、誰か、ペン忘れたか？」

「あっ、俺だ！大事なペンだから、取りに戻るよ！」と、電話口から
薫の声が聞こえた・・・。

「あっ、翠ちゃん、薫のペンみたいだから、今から取りに戻るけど
　そっちは、大丈夫かな？」

「はい、どのくらいで付きますか？」

「10分もあれば着くけど・・・・」

「はい、お待ちしてます」

仕方なく、返事をした・。
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