月灯りに照らされて
「そこでだ、翠。・・・・結婚しよう・・・・・」
 
突然の薫の言葉に、翠は言葉が出なかった。

「へぇ!?・・・・・今、なんて・・・・・」

「うん、だから、結婚しよう! と、言った」

「・・・・・・あのね、 薫は、今日、離婚したばかり、だよね!?」

「うん、でも、男は、別に、妊娠は関係ないから、すぐに結婚できよ!」

「イヤイヤ・・・そうじゃなくて、常識ってもんが・・・・」

「そんなの関係ないよ。だって、翠も俺も、大人だし、別にいいだろ!」

「イヤイヤ・・・・・大人だけど・・・でも世間ってものが・・・
 だいいち、ほら、お父さん達が、許さないでしょ!?・・・ねっ!」

薫は言い出したら、聞かないのは十分承知しているが、まさか
離婚した後、すぐに結婚は、どう考えても出来ない。そう思ったのだが

「あぁー、親父達は、心配ない。これにサインしてくれたし!」

と、婚姻届を出して来た。

「・・・・・・・・・・・・・・マジで・・・・・」

「俺はもう記入済みだから、ここに翠のサインがあればいいだけだよ!」

あまりの事に、手と目が止まってしまい、呆然としていると

「翠ちゃん、今頃逃げようなんて、思ってないよね!・・・・・」

怪しい目付きで、見られ、思わず、首を横に振り

「に・逃げようなんて、思ってないわよ!ただ・・・急だったから」

だめだ、この展開に頭がついて行かない・・・。
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