月灯りに照らされて
10分後、

「すみません!」と、橘 薫が店に戻って来た・・・・。

「はい、こちらでよろしいですか?」

「あっ、これこれ、大事なペンなんだ・・・ありがとう」

「どういたしまして」と答えると、オーナーが

「翠ちゃん、上がって良いよ!」

と、声をかけてくれて翠は一瞬、ギョッとした。

「あがるの?」

「はい、帰ります。」

「・・・・じゃー、送ってくよ!店の前で待ってる・・」と、言い終わると
人の返事も聞かずに、薫は店を出て行った・・・。

断ろうと思ったのに・・・・仕方ないか・・諦めモードの翠だった。

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「お待たせしました」翠が、外に出ると

「へぇー、昨日とまた違った雰囲気だね・・・」

そりゃーそうだ・・・。今日は、出かけるつもりもないので
ジーンズにTシャツにカーデガンと言う、ラフな恰好である。

正直、自分の生活能力を考えると、お洒落にまで手は回らない・・・。

そんな事を思いながら、翠は、つっけんどんに

「いつも、こんな感じですよ。所詮しがない学生ですから・・・・。」

「そうか・・。この後予定は?」

「帰って、寝ます。疲れましたから・・・・・」

まだまだ続く攻防戦。

「じゃー、大丈夫だな!よし、飲みに行こう!」

「えっ、ちょっと待ってください。私、帰るって言いましたよね!?」

「うん、でも俺は予定はないの?って聞いたんだから、帰って寝るのは
 予定ではないでしょ!さぁー行くよ!」と、無理やり腕を引っ張られ
 ほどなく近くのバーに連れ込まれた・・・・。
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