月灯りに照らされて
「こんばんわ、一人？」

「・・・・・・・・・・・・・」

彼女は、無言のまま、カクテルを飲んでいた。

その様子は、元気がなく、まるで失恋でもしたかのような様子だった為、
思わず、翼は

「なんか、失恋でもしたの？　哀愁が漂っているんだけど・・・・」

彼女は、まるで『大当たり』ですと言わんばかりに、目を見開き
翼を睨みつけた。

「そうなんだ・・・。君、僕の事、覚えてない？」

「えっ？・・・・・・・

彼女は、暫く、翼の顔をじっと見た。

「あっ、思い出した。橘　薫の秘書だ！」

「そう、ご名答！思い出したかな！？」

「はい。その節は、麗華がお世話になりました。」

「どういたしまして。麗華さん再婚したんでしょ？」

「はい。今は、幸せにしてます。」

「そう、良かった。で、君は、どうしたの？」

「・・・・・・・・・・・失恋したんです・・・・・」

「そっか・・・・。悲しいな・・もう一杯飲む？」

彼女は、頷き、翼は、神崎に２杯目を頼んだ。

「ところで、君の名前を教えてくれる？」

「横田　沙織です。あなたは？」

「僕は、工藤　翼。３３歳の独身」

「ふっ・・・、見合いじゃないのに、そこまで言うんですか！？」

「まぁーね。既婚者だと思われるのも嫌だからね・・・沙織ちゃんは？」

「３０歳の独身です。ちなみに、今日、先ほど、振られました・・・」

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