月灯りに照らされて
バーには、珍しくあまり客がおらず、カウンターに座り
飲み物を注文すると、男が声をかけてきた。

正直、今日の沙織は、男のナンパに付き合う気はない。

無視していると、男から、「君、僕の事、覚えてない?」

と、言われ、顔を良く見ると、思い出した、麗華の元旦那の秘書だ!

そうだ、麗華が離婚してから、偶々買い物に出かけた時、橘 薫の
奥さんと偶然会って、そこで翠さんが倒れて救急車騒ぎになった時
病院から、自宅まで送って貰ったんだ・・・。

そうと分かると、何となく警戒心が無くなり、翼に今日失恋したこと
や、いつも言われるセリフなど、どんどん自分の事を、喋り始めた。

そして、二人で過ごす時間は、意外に楽しかった。

*****************

「んっ・・・・・ん~う~ん・・・・・」

なんか、いつもと寝心地が違う・・・・・なんか、後ろが暖かい。

あれ~いつの間にか、博と寝たんだっけ?・・・・・

「ん~・・・博、離して・・・・起きてシャワー浴びるから・・」

博だと思っても、なぜか違うような気がした時、

「フフフッ、ごめんね。博じゃなくて」

一瞬、頭の中が真っ白になり、目を開けると、そこは知らない部屋だった。

「えっ、ここって・・・・」

「うん、僕の部屋だよ。しかし、沙織も酷いなぁー。あれだけ抱き合ったのに
 まだ元彼の名前を呼ぶなんて・・・お仕置きが必要だね」

そう言いながら、翼の手が、沙織の躰を撫で始めた。
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