月灯りに照らされて
「俺達、兄弟は、小さい頃から、大人たちの表と裏と沢山見ながら
 育ってきた。政治家って特殊な世界だろ!?人との腹の探り合いを
 親父は、わざと俺達に見せてきた。当然学校に行くようになる頃には
 皆、俺達の家をみて、近寄って来た。小さいながらに、俺達は、
 本当の俺達を見てくれない同級生の奴らに嫌気が差し、誰とも
 本心で付き合う事しなかったんだ。
 中学に上がる頃になると、今度は俺らの容姿もそこに含まれるように
 なって来た。俺達と付き合えば、ステータスだと、言わんばかりだった。
 そんな時に、俺は、翼と一樹に、蓮は神崎さんに会ったんだ。
 あっ、神崎さんは、バーのマスターね。
 それから、俺達は年が近いせいもあって、良く遊んだ。
 ただ、女達は、俺達の外見しか見てなくて・・だから俺達は、女を
 信用しなかった。
 蓮とお互いに、女と遊びの関係は持ったけど、本気になることはなかった。
 相手が、本気になると、俺達は、約束が違うだろ!と言って、関係を
 解消してきた・・・。
 翠と初めて会った日、覚えてる?」

「うん、陽だまりの打ち上げでしょ!」

「うん、陽だまりのひとみが、蓮と付き合っていたのは知ってる?」

「うん、芸能ニュースでも言ってたから、知ってる・・・」

「実は、あの日、蓮は、ひとみとの関係を解消したくて、俺を
 呼んだんだ。」

「えっ・・・・、何で、薫が呼ばれたの?」

「ひとみは、かなり前から、蓮に対して束縛をし始めてて、
 蓮は、関係を解消したくて、何度も話すんだけど、ひとみは
 聞く耳を持たなかったんだ。仕方なく、俺が悪者になって、今日、
 翠が蓮に言われたような事を、ひとみに言ったんだよ・・・。」

「・・・・・・・・。」

「小さい頃から、お互いの女関係に関しては、そうやって
 助け合って来たんだ・・・。だから蓮が今日、翠にしたことは
 今までの事を考えると、仕方ないんだ。蓮は俺を心配して
 あんな行動をとったんだよ・・・。ごめん、翠を傷つけること
 なってしまって・・・・。」

「ううん・・・・薫、今まで本当に嫌な思いをしてきたんだね。
 私は、大丈夫だよ。薫が側に居てくれれば、怖いものなんか、
 何もないから・・・」

「翠・・・・ありがとう・・・」
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