月灯りに照らされて
「だから、薫、来年の選挙には、おまえが、出馬しろ!
 今からなら、1年半ある。そのつもりで準備しろ。いいな!」

「はい・・・・・・」何も言えなかった・・・・・。

まだ先だと思っていたのに・・・・・

「それから、今付き合っている娘だが、選挙が始まるまでに
 別れておけ・・・・。いいな!」

「・・・・・・・・・」

多分俺の顔は、血の気が引いて、青くなっていたんだと思う。

「大丈夫か、薫・・」と、蓮が心配そうに声をかけた。

「・・・あっ・・あー・・・・・大丈夫だ」

そうは言っても、頭の中は、真っ白で、何も考えられなかった。

「ちょっと、部屋に戻る・・・」俺は席を立った。

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「あなた、あれでは薫が可哀想ですよ。」

「親父、薫の気持ちも少しは汲んでくれよ・・・・」

「お前たちの言いたいことは、分かるが、これも二人の為だ。
 もし、その子と結婚したとしても、美奈子の時よりもっと
 大変だぞ。ましてや親が二人とも他界していたんでは、その子の
 逃げ場もない。俺達の住んでいる世界は、そんな生易しいものじゃないし、
 隙があれば、いつでも足元をすくわれる。一般人のその娘には
 橘に入ることの方が酷だと、俺は思うがな、違うか?」

「「・・・・・・」」お袋と俺は、何も反論出来なかった。
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