月灯りに照らされて
夕食の時に、

「あのね、就職が決まったの」

「えっ、いつの間に、決まったの?」

「うん、実は、一昨日、私の後見人だった南条さんって、覚えている?」

「うん、あの弁護士さんだろ」

「そう、南条さんから久しぶりに電話があって、南条さんの事務員さんに
 一人、欠員が出るらしくて、それで大学の教授に相談したら、私を
 薦めてくれて、それで、どうかって。それで昨日、南条さんの事務所に
 行って来たの。」

「そうだったのか。良かったな!頑張ったかいがあって。」

「うん、だからね、ゴールデンウィーク明けから、週3日程、
 事務所に、バイトに行くことにしたの。その方が、早く仕事も
 覚えられるし、就活する必要がなければ、時間もあるからね。」

「うん、解ったよ。無理だけはするなよ。おめでとう、翠」

「ありがとう、薫」

就職の報告をして、ようやくひと段落した気分だった。

それからは、あっという間に、日々が過ぎ、私は、ゴールデンウィーク
まで、レストランで働き、休み明けからは、南条法律事務所で働き
始めた。

働くと言っても、お茶出しに、コピー取り、書類整理に、ウェブの管理。

さまざまな仕事があって、バイトの日は、仕事に追われるだけだった。

それでも、どうにか仕事を覚えられるようになったのは、既に季節は
夏、本番だった。
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