月灯りに照らされて
今、政局は揉めに揉めていて、来年の任期を待たずに、どうも
選挙になるらしく、薫は、毎日あわただしく動いていた。

当然、お昼を食べる時間がない時も沢山あって、翠は薫の躰が心配で、
仕方なかった。

不規則な生活の上に、食事もままならないのでは選挙なんて乗り越え
られるわけがない。

少し差し出がましいとは、思いつつも、薫にお弁当を作ろうと考えたのだ。

その日から、翠は、毎日、選挙運動前まで、お弁当を作ることにし
少しでも、薫が、元気で仕事が出来るようにと、祈っていた。

政局は、結局拗れに拗れて、解散となり、10月に選挙が行われることに
なり、薫の忙しさは増していった・・・・。

衆議院が解散になったあと、すぐに選挙態勢に入ったが、翠は、
いつものように支えるだけだと、自分に言い聞かせていたら、
意外な人から、電話がかかって来た。

番号は、非通知で、出たくなかったが、薫関係かもしれないと思い

「もしもし・・どちら様でしょう?」

「突然、すみません。橘です。」

薫の父からだった。

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