月灯りに照らされて
その夜は、二人はその日のうちに、帰ることが出来ず、
明け方ようやくマンションに戻って来た。

「薫、おめでとう。良かったね!」

「翠が、側に居てくれたから、頑張れたんだよ。翠、ありがとう」

「ううん。薫が頑張った成果だよ。野党になったかもしれないけど
 薫が国民の為になることなら、自信を持って、取り組んで行ってね。」

「うん、俺に出来ることをやるだけだから・・・」

薫の選挙運動を手伝い、改めて、翠は薫との世界が違うことに
気づかされたが、今は、その思いを胸にしまい、残り僅かな
時間を大切にしたかった・・・。

翌朝、少し遅く起き、選挙前のように、二人でご飯を食べ、薫を
送り出すと、電話が鳴った・・・。

非通知だ!

「はい、小鳥遊です。」元からの電話だった。

「おはよう、橘です。」

「おはようございます。この度は、おめでとうございました。」

「ありがとう。これも君のお陰だと思っているよ・・・」

「いいえ、私は大したことはしていません。皆さんのお力です。」

「実は、小鳥遊さん、薫の縁談が決まった・・・・」

「・・・・・そうですか・・・・・」

「近いうちに、二人を会せて、二人がどう答えを出すか、様子を
 見ようと思っている。」

「・・・・・・・」

「もし、薫が、断って、君を是非、嫁に!という覚悟があるなら
 私は反対はしない・・・。でも薫が縁談を受けた場合、君に
 は、申し訳ないが、薫に君を守る力がなかったと思って欲しい」

「解りました。全ては、薫さんの意志ですね・・・・」

翠は、『とうとう、期限が来てしまった・・・・・。』

心の中で呟いた・・・。
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