蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
窓の外に春の闇が広がり始める。
絢乃は寝室の床に座ったまま、力なく俯いていた。
寝室の中には鏡やクローゼットが備え付けられ、部屋の中央にはキングサイズだろうか、大きなベッドが置かれている。
床は冷えるが、ベッドに座りたくない……。
『ここはね、私と慧がいつも使っていた部屋よ』
『慧って、ベッドの中だととても情熱的よね? ……慧はここに来ると、朝まで私を離すことはなかったわ。それこそ狂ったように抱き合ったわ、夜が明けるまで何十回もね』
『慧の寝顔って、無防備でつい引き込まれそうになるのよね』
沙耶の言葉が絢乃の心を打ちのめす。
絢乃は冷たい床に座ったまま、胸に広がる黒い感情にぎりっと唇を噛みしめた。
――――慧とあの人が、ここで……。
そう思うと、吐き気がする。
慧がここであの綺麗な人を心のままに抱いていたと思うと……。
嫉妬で胸が焼け焦げそうになる。