蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
慧は血の気の引いた顔で携帯を握りしめた。
――――大事なものが、この手から滑り落ちていく。
幾ら手を伸ばしても、届かぬ場所に行ってしまう……。
「……っ……」
慧の心に黒い焦りが広がっていく。
と同時に焼けるような激情が広がっていく。
例え、二人が只ならぬ関係だとしても……。
絢乃は今、法律上はれっきとした自分の『妻』だ。
『妻』を取り戻すのは、『夫』に許された権利だ。
――――法も、道具だ。
使えるものは使わなければならない。
そして自分はその使い方をよく知っている。
慧は携帯を手に六法全書が並んだ棚へと向かった。
その目は夜闇を睨む鷹のように鋭く輝いていた……。
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