蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



慧は血の気の引いた顔で携帯を握りしめた。


――――大事なものが、この手から滑り落ちていく。

幾ら手を伸ばしても、届かぬ場所に行ってしまう……。


「……っ……」


慧の心に黒い焦りが広がっていく。

と同時に焼けるような激情が広がっていく。


例え、二人が只ならぬ関係だとしても……。

絢乃は今、法律上はれっきとした自分の『妻』だ。

『妻』を取り戻すのは、『夫』に許された権利だ。


――――法も、道具だ。

使えるものは使わなければならない。

そして自分はその使い方をよく知っている。


慧は携帯を手に六法全書が並んだ棚へと向かった。

その目は夜闇を睨む鷹のように鋭く輝いていた……。



<***>


< 105 / 179 >

この作品をシェア

pagetop