蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



購入時、沙耶は慧に一緒に内見に来てくれと頼んだ。

が、慧は用事があるからと断った。

その後も慧がここに来たことはない。

……そう。


――――慧と自分があの寝室を使ったことなど、一度もないのだ。


慧が自分を抱いたのは大学の時のみで、社会人になってからは体を重ねたことは一度もない。

沙耶がいくら誘っても、慧がその誘いに乗ることはなかった。

それにそもそも、慧が朝まで沙耶の隣にいたことはない。

どんなに遅くなっても慧が泊まることはなかった。

朝まで一緒に居てと懇願しても、慧は『家族が待ってるから』と言い夜のうちに帰って行った。


もちろん、狂ったように朝までなどということも一度もなく……。

デートの時も体を重ねている時も、慧はいつもどこか申し訳なさそうな目で自分を見ていた。


「……慧……」


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