蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



得体のしれぬ冷たいものが沙耶の背筋を流れていく。


ふとテーブルの上を見ると、絢乃の携帯が振動している。

沙耶はテーブルに近づき携帯を取り上げた。

待ち受け画面に出ているのは、『秋月慧』の文字。


見ると、昨日から数件着信履歴が入っている。

メールは一件も入っていない。


「…………」


沙耶は立ち上がり、左手の指輪をすっと引き抜いた。

離婚届が入った茶封筒に入れ、封をする。


慧を騙せるかどうかはわからない。

だがもう、ここまできたらやるしかない。


沙耶は茶封筒と財布を手に、玄関へと足を向けた……。



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