蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
17:00。
部屋に一人残された絢乃は、呆然とその場に座り込んでいた。
衝撃が胸を掻き荒らし、まともに考えることができない。
沙耶が持ってきた昼食の盆はそのまま置かれ、時間の経過と共にすっかり冷え切っている。
――――慧の、子供……。
その衝撃は絢乃の心を完膚なきまでに打ち砕いた。
視界が涙で滲み、ぽたり、ぽたりと頬を伝って床に染みを作る。
どうして…………
どうして自分は、慧の妹なのだろう。
どうして……。
自分でもどうしようもない黒い感情が胸に沸き起こる。
――――自分以外の女を、慧の前から消してしまいたい。
そうすれば慧は自分しか見なくなる。
こんな風に考える自分は、なんて醜いのだろう……。
慧の妹でなければ、こんな風に思わずに済んだのだろうか?
もっと純粋な気持ちで慧の前に立てるのだろうか?
錐で突き刺されるような鋭い痛みが胸に広がっていく。
絢乃は俯き、両手で顔を覆った……。