蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



プルルルと携帯が鳴った。

画面に表示されたのは、『加納卓海』の文字。

とっさに通話ボタンを押した慧の耳に、卓海の声が入ってきた。


『慧か?』

「――――っ……」

『夜分悪ぃな。あいつ、そこにいるか?』


卓海は慧の心境などそ知らぬ様子で言う。

無言の慧に、卓海は続ける。


『商品マスタの件で連絡したいことがあって、あいつに何度か電話をかけたんだが、何度かけても出ないからさ。代わりにお前に……』


卓海はそこまで言い、言葉を止めた。

どうやら慧の様子がおかしいことに気付いたらしい。


『……おい、慧? どうした?』


卓海は訝しげに言う。

その声に慧はあることを直感した。

その直感に押されるように早口で言う。


< 119 / 179 >

この作品をシェア

pagetop