蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
「卓海、ひとつ聞きたい。……昨日、絢乃は何時に上がった?」
『何時って……。17時には上がったはずだぜ? 早く上がれって言ったんだが、急ぎの仕事が来てな……』
卓海はいつもの口調で続ける。
その声音に嘘をついている様子はない。
慧の頭の中で、物凄い勢いで思考が組み立てられていく。
離婚届。指輪。
そして、これらがこのタイミングで届けられた意味……。
冷静になって思い返してみれば……。
一か月前に絢乃があの事実を知った時、自分は絢乃にこう告げた。
『離婚届の不受理申出もしてあるから。離婚届を出してもムダだよ?』
そう、絢乃は離婚届を出しても受理されないことを知っているはずだ。
その絢乃が自分に離婚届を送るはずがない。
つまりこれは誰かが作為的にやったことだ。
そして今の卓海の話を聞く限り、犯人は卓海ではない。