蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
「え……、奥さん、行方不明なの? いつから?」
『昨日の夕方、会社を出てから行方が分からなくてね』
「そうなの……。それは心配よね、慧……」
沙耶は自分の女優能力を最大限に発揮し、囁いた。
ここで慧に疑いをもたれるわけにはいかない。
沙耶は心配そうな声を装い、続けた。
「私、調べるツテならいくつか知ってるから……。知り合いに頼んでみましょうか?」
『そうしてくれると、ありがたいな』
「わかったわ。じゃあ何かわかったら連絡するから」
その後二言三言交わし、二人は電話を切った。
どうやら慧はまだ勘付いていないらしい。
しかし、慧と会う理由ができたのは大きなチャンスではある。
このチャンスを利用しないわけにはいかない。
沙耶は口元に笑みを刻み、報告書をテーブルの上にばさっと放った。
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