蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
<side.慧>
沙耶と別れた20分後。
慧はその足で田町へと向かった。
月曜の夕刻、田町の駅前はサラリーマンでごった返している。
慧は駅から徒歩10分ほどのところにある、とあるビルへと入っていった。
エントランスを抜け、エレベーターホールに入る。
ホールの脇には案内板が掛けられており、その中に『グランツ・ジャパン』の文字がある。
「……8階、か」
慧は降りてきたエレベーターに乗り込み、8Fのボタンを押した。
やがてエレベーターはポーンという音と共に8Fで止まる。
エレベーターを降りると、グランツ・ジャパンの来客用受付ブースが見えた。
ブースに座っていた受付嬢が慧の姿を見るなりはっと背筋を伸ばす。
慧はブースに歩み寄り、口元に柔らかな笑みを刻んで言った。
「加納課長と約束の秋月です」
「……はっ、はい。応接室5番にどうぞ」