蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
2.ひとつの結末
<side.沙耶>
絢乃の足音が玄関の向うへと消えていく。
やがて、バタンとドアが閉じる音がリビングに響いた。
「――――っ……」
沙耶はテーブルに残された書類を見た。
自分宛ての『通知書』にも衝撃を受けたが、沙耶がより衝撃を受けたのは、絢乃宛ての『同居請求』だった。
今回絢乃を監禁したのは自分だが、もしこれが絢乃の意志で慧と離れた場合、同居請求が慧から申請されていると絢乃は『有責配偶者』となる。
有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない。
――――つまり。
絢乃の側から離婚訴訟を起こすことはできなくなるのだ。
今回はあくまで『通知』なので何の法的効力もないが、沙耶は慧がこの書類を同封したことに驚愕していた。
『同居請求』をするということは、つまり慧が絢乃を離すつもりはないという明確な意思表示だ。
この書面の宛先は絢乃だが、慧はこの書類が自分の目に触れるであろうことを確信して同封したはずだ。
「……っ、慧……」