蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



沙耶はこれまで、慧は絢乃に騙され結婚したのだと思ってきた。

しかしこの書類がそうではないことを如実に物語っている。


かつてない衝撃が沙耶の胸を襲う。

沙耶はテーブルの端をぐっと掴み、ぎりっと唇を噛みしめた。

その時。


沙耶の携帯が鳴った。

震える手で携帯を取り上げた沙耶の耳に入ってきたのは……。


『……沙耶?』


耳を震わせる低い声。

いつも冷静で穏やかな、その声……。


「慧……」

『そろそろ届いた頃じゃないかと思ってね。……絢乃はまだそこにいるの?』

「……いえ、出てったわ。今しがた、ね」

『そう』


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