蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
沙耶のマンションを出た絢乃は、すぐに近くの大通りへと出た。
ここがどこなのかよくわからないが、大通りを歩いていけばどこかの駅に出るだろう。
幸い天気は良く、傾きかけた日の光がビルの隙間を照らしている。
絢乃は急ぎ足で歩き出した――――そのとき。
「……アヤ」
耳に慣れた、低いテノールの声。
はっと足を止めた絢乃の肩を後ろから掴んだのは……。
「慧兄……っ」
ジーンズに白いシャツ、紺のアーガイルカーデを着た慧が立っていた。
その姿も絢乃を見つめる眼差しも、五日前に別れた時と全く変わっていない。
きっと慧は、自分を迎えにわざわざここまで来てくれたのだろう。
絢乃の胸に熱いものが込み上げる。
それに押されるように慧を見上げた絢乃だったが……。
「……っ……」