蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



慧を見上げた絢乃の瞳が、くっと歪んだ。

絢乃の脳裏にこの四日間のことが蘇る。


あの寝室、ベッド、指輪、そして……。


『あの時、実は私、妊娠してたのよ。……慧の子供をね』


絢乃の心を奈落の底に突き落とした、沙耶の言葉……。


絢乃の胸に黒い激情が込み上げる。

それは一瞬で絢乃の胸を覆い尽くした。

その痛みから逃げるように、絢乃は肩に置かれた慧の手を反射的に振り払った。


「――――っ!」


それは、無意識の行動だった。


自分の行為に驚愕する絢乃を、慧が瞠目して見つめる。

春の陽光のように穏やかだった瞳に、炎のような怒りが瞬間的に燃え広がる。


「……っ、アヤ……」


< 146 / 179 >

この作品をシェア

pagetop