蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
慧を見上げた絢乃の瞳が、くっと歪んだ。
絢乃の脳裏にこの四日間のことが蘇る。
あの寝室、ベッド、指輪、そして……。
『あの時、実は私、妊娠してたのよ。……慧の子供をね』
絢乃の心を奈落の底に突き落とした、沙耶の言葉……。
絢乃の胸に黒い激情が込み上げる。
それは一瞬で絢乃の胸を覆い尽くした。
その痛みから逃げるように、絢乃は肩に置かれた慧の手を反射的に振り払った。
「――――っ!」
それは、無意識の行動だった。
自分の行為に驚愕する絢乃を、慧が瞠目して見つめる。
春の陽光のように穏やかだった瞳に、炎のような怒りが瞬間的に燃え広がる。
「……っ、アヤ……」