蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
慧の傍に居たい。
慧を誰にも渡したくない。
……その気持ちは、変わらない。
けれど沙耶の言葉は絢乃自身の存在価値を根元から否定した。
それは黒い波となって絢乃の心を蝕んでいた。
俯いた絢乃の隣に、慧が腰を下ろす。
柔らかいウッドノートの香りが絢乃の鼻先をかすめる。
無言の絢乃に、慧はいつもの優しい声で言った。
「体調は大丈夫? 痛いところはない?」
「……あ、うん……」
「ご飯はちゃんと食べてた? お腹が空いてるなら今日は夕飯を早めにしようか?」
いつもの他愛ない会話。
絢乃は幾分ほっとし、慧の顔を見上げた。
慧はさらっと絢乃の髪を撫で、優しく微笑んで続ける。
「今日は早めに休もうか。……と、そうだ」