蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
「……ね、アヤ……」
「……っ……」
「いくらおれでも、我慢できることとできないことがある。お前を傷つけたくはない。だけどね……」
慧は掠れた声で言い、くいと絢乃の顎を掴んだ。
正面から強引に視線を合わせられ、絢乃は息を飲んだ。
「アヤ、もう一度はっきり言っておくよ。……おれは一生お前を離すつもりはない。例え実の兄妹でもね」
「……っ、慧兄……」
「おれはそのためならどんなことでもする。お前を騙すのも罠にかけるのもおれは躊躇しない。それはもう、お前も分かっているはずだ」
慧は言い、瞳を歪めて笑った。
自嘲するようなその笑みの奥に深い哀しみを感じ、絢乃は胸が張り裂けそうな気がした。
……自分は、慧を傷つけてしまった……。
慧がどれだけ自分を愛しているか、知っているのに……。
過去に沙耶とのことがあったとしても、慧が愛しているのは自分だ。
それはずっと慧に慈しまれてきた自分の心と体が、何よりも良く知っている。