蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
絢乃を見つめる慧の瞳が切なげに歪む。
慧はじっと絢乃を見つめ、囁くように言った。
「ね、アヤ……」
「……っ……」
「一度でいい、お前の正直な気持ちを聞きたい。……お前にとって、おれはまだ兄なの? 男として見たことは一度もない?」
胸の奥から押し出すような切ない声に、絢乃は喉を震わせた。
その声にも、瞳にも、自分への深い想いが溢れている。
それは絢乃の胸に流れ込み、僅かに残っていた理性を押し流した。
きっと慧は、自分が『兄としてしか見れない』と言えばそれを受け入れるだろう。
慧はいつも自分の幸せを願ってくれた。
その深い愛情は昔から変わらず、絢乃の心をずっと包んでくれた。
絢乃の胸に熱い想いが溢れ出す。
瞳に映る慧の顔が、涙でぼやけはじめる。
絢乃は震える唇を開き、潤んだ声で言った。
「……そんなこと、ない……」
「……アヤ……」
「私、慧兄が好き。でも……っ」