蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
――――10分後。
絢乃の話を聞き終わった慧は、深いため息とともに頭を抱え込んだ。
項垂れた絢乃の前で、慧はしばし何かを思案した後……。
絢乃の肩を掴み、正面から向き直った。
「アヤ、まず先にこれだけは言っておくよ。おれは大学を出てから彼女と関係を持ったことはない。彼女のマンションに行ったこともない」
「……え?」
絢乃は驚き、彫像のように固まった。
思考が止まり頭がからっぽになる。
何も言えない絢乃に、慧は続ける。
「だから彼女がおれの子供を、なんてことはありえない。それに去年の秋って言えば、お前と社員旅行に行ってた頃だろ?」
「……時期的には、そうだけど……」
「あの時のおれはお前との旅行で頭がいっぱいで、そんなことを考える余裕すらなかったよ。……あれがお前との最後の旅行になるだろうって、おれは思ってたからね」