蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
慧はそこで言葉を止め、じっと絢乃を見た。
いつになく真剣な瞳に絢乃は息を飲んだ。
「……お前が騙されたのは、お前の心に不安があったせいかもしれない。それに気付かなかったのは、おれの落ち度だ」
「慧兄……」
「本当は、お前があの事実を知った時に言っておくべきだったのかもしれない」
慧は言い、そっと絢乃の頬に片手を伸ばした。
その真剣な目に、絢乃は慧が何を言おうとしているのかを察し体を強張らせた。
……やがて、しばしの沈黙の後。
慧はゆっくりと口を開いた。
「初めに、これだけは言っておくよ。……おれは、何も諦めるつもりはないよ。普通の家族としての幸せも、子供を持つことも」
「えっ……」
慧の言葉に絢乃は思わず目を見開いた。
驚きのあまり何も言えない絢乃に、慧はいつもの落ち着いた声で言う。