蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
周りの景色に気を取られて足元が疎かになってしまったらしい。
――――恥ずかしい。
と頬を染めた絢乃の顔を、慧が脇から覗き込む。
「本当にお前は目が離せないね?」
「っ、ごめん……」
「ほら、おいで? そんな端を歩いちゃダメだよ」
慧の腕がぐっと絢乃の肩を抱く。
絢乃はそのまま道の真ん中へと誘導された。
しかし慧の腕は肩に回ったままだ。
「……慧兄……」
「そろそろ夕飯にしようか? 何がいい?」
「そうだね、……たまには中華とかいいかも?」
「了解。アメ横の近くに一つ知ってる店があるけど、そこでいい?」
「うん」
慧の腕の温かさが絢乃の背越しに伝わる。
桜吹雪の中、ウッドノートの甘い香りが絢乃の全身を包み込む。
絢乃はドキドキしながら、慧に連れられて公園の出口へと向かった。