蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



その日の夜。

23:30。


絢乃は膝を抱えて湯船に浸かっていた。

浴室には湯気が立ち込め、電球の明りが幾重にもぼやけて見える。


洗い場の隅にはシャンプーやリンス、ボディソープが並べられている。

その中にあるアイボリーにロイヤルブルーのラインが入った瀟洒なボトルは、慧が使っている外国製のシャンプーだ。

ウッドノートの優しく穏やかな香りはいつしか慧の香りとなり、絢乃も昔からこの香りが大好きだった。

ちなみに絢乃が使っているのはドラッグストアに並んでいるごく一般的な物で、ここ数年、絢乃は同じ銘柄の物を使い続けている。


「…………」


あれから、一週間……。

あの事実を知ってから、絢乃の心にある変化が起こっていた。

それは絢乃の心だけではなく体にも影響し、絢乃はこの一週間、頭を悩ませていた。


得体の知れぬ不安が絢乃の心を覆っていく。

それは焦りなのか、申し訳なさなのか、それとも……。


でもいつまでも、ここにこうしているわけにはいかない……。


意を決し、絢乃は湯船を上がった。

その足は鉛のように重かった……。


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