蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



『……お前は私にそっくりだ。特に気質がな』

「かもしれないね」


慧はくすりと笑った。

30年前、恋人がいた母を強引に奪った父。

しかし母を得ることはできず、代わりに妹の時世と結婚した。

恐らく父は、母と夫婦になるのが無理ならせめて親族という関係になりたいと思い、妹の時世と結婚したのだろう。

――――『この人』と決めた人は絶対に逃がさない、執念とも言える愛情。

父の血は、確実に自分にも流れている。


思えば……。

もっと早く父と接触していれば、絢乃を苦しめずに済んだ。

あの事実を知っているのは自分だけで済んだ。

そのことは慧の胸に深い後悔となって横たわっている。


『こうなった以上、もう私から何も言うことはない。……ただ、絢乃を不幸にだけはするな。それだけだ』


父の真剣な声が耳に響く。

慧は頷き、はっきりと言った。


「それは心配しないで。……おれの全てを賭けて、アヤを幸せにするから」



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