蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
24:00。
絢乃が慧の部屋に入ると、慧はベッドのヘッドボードに寄りかかり本を読んでいた。
慧は夜、読書する時のみ眼鏡をかける。
日中はかけないのだが、夜のみ目に負担がかかるからと数年前からかけるようになった。
細い黒フレームの眼鏡は慧によく似合っており、絢乃は見るたびにドキッとしてしまう。
戸口に立った絢乃を見、慧は視線を上げた。
その手にある本のタイトルは『PMBOK応用』。
システム関連の書籍で、絢乃も前に慧に借りたことがある。
絢乃の視線の先で、慧はパタンと本を閉じた。
サイドボードに本を置き、絢乃を見る。
その瞳はシェードランプの光を映し艶やかな色を帯びている。
「――――おいで、アヤ」
慧の瞳が絢乃を射る。
絢乃はこくりと息をのみ、一歩、また一歩とベッドに近づいた。
その足取りはひどくぎこちない。