蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



ひずみは肉体関係の拒否という明確な形で絢乃の体に現れた。

キスや軽い愛撫は受け入れてくれるが、繋がろうとすると絢乃の体は氷のように固まってしまう。

それは血が繋がっていることに対する本能的な恐怖なのかもしれない。

自分の絢乃に対する気持ちはとうにそれを凌駕していたが、絢乃にとってはそうではなかった。

これまでの経緯を考えればそうなるのも無理はない。

――――禁断の果実を無理やり食べさせ、罪の淵に引きずり込んだ自分。

自分のしていることがどれほど狂気じみているか、それは慧自身もわかっている。


しかし絢乃はそれでも自分に向き合おうとしてくれている。

その気持ちは恋というよりはまだ申し訳なさや同情の方が大きいのだろう。

それでも自分を見ようとしてくれる絢乃に、慧は吸い込まれるように惹かれていく。


本当は、心のままに絢乃を抱きたい。

あの事実を知るまで、絢乃は躊躇しつつも慧を受け入れてくれた。

不感症だった絢乃が自分の手でゆっくりと花開いていくその姿に、慧の心は根こそぎ奪われた。

大人の女の色気を瞳に映しつつも、慧が快楽を与えると、少女のような清純さで縋るように抱きついてくる絢乃がたまらなく愛おしい。

波打つ黒髪も、頼りなげに揺れる白い躰も、慧の目を奪って離さない。

絢乃のこんな姿を見るのは自分だけだと思うと衝動的な愛おしさが胸に広がり、一瞬でも気を抜くとめちゃくちゃにしてしまいそうになる。


けれど、今は……。


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