蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



春の柔らかな陽だまりの中を、桜の花びらがはらはらと散っていく。

青空を映す湖面に薄紅色の花びらが一枚また一枚と落ち、暖かい春風に吹かれて水面をゆっくりと流れていく。


桜の季節を迎え、不忍池の周りは花見客でごった返している。

春霞に覆われた上野公園の様子を眺めながら、祖母の初枝はしみじみと言った様子で口を開いた。


「上京したのは5年ぶりだけど、相変わらず人が多いねぇ」

「特にこの時期の上野はね……。あと一週間もすればだいぶ減るとは思うけど」


絢乃は眼下に広がる景色を見下ろし、コーヒーを一口飲んだ。


――――3月下旬の日曜。

絢乃と慧は、上京した祖母の初枝とともに上野公園を見下ろす駅近のレストランにいた。

レストランは雑居ビルの4Fにあり、窓の向うに上野公園を一望することができる。


今年は桜の開花が早く、この週末が花見のピークだとニュースでやっていた。

上野は混んでいるだろうなとは思っていたが、想像を上回る混み具合だ。


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