蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
「愛はあるが片方にだけ、献身はあるが片方にだけ。つまり片方の心だけがずっと踏みにじられる。考えただけで地獄だろ?」
「……っ……」
「それでも……、それでもいいって思っちまうんだろうな。どんなに苦しくても、相手を繋ぎとめておけるなら構わない。そう思って結婚に踏み切るんだろうな……」
「………………」
「相手の心を繋ぎとめておく方法などない。だから法に頼らざるを得ない。……でも実際、結婚生活が始まったら地獄の苦しみだろうな、そんな結婚は」
卓海の言葉が絢乃の胸を鋭く抉る。
卓海が言っているのは極端な話だが、言っていることはなんとなくわかる。
結婚しても、愛している人の心をずっと繋ぎとめておく術などない。
ましてや最初から片方にしか愛のない結婚だったら、それは……悲劇だ。
考え込んだ絢乃だったが、向かいに誰かが座ったのに気付き、顔を上げた。
見ると、子犬のような可愛らしい顔をしたショートボブの女の子が座っている。
その隣にはドーベルマンのような精悍な顔をしたスーツ姿の青年がビール瓶を片手に座っている。
「藤田さん、半田くん……」