蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
6.波乱の予兆
<side.慧>
翌日の日曜。
慧は渋谷にある喫茶店の一角でとある人物と対峙していた。
その人物からメールを貰ったのは数日前。
慧としては会う気はなかったのだが、メールのやり取りだけでは納得しなかったらしい。
その人物はカツカツとハイヒールを鳴らして慧の前まで歩み寄ると、髪をばさっと掻き上げて慧の向かいの椅子に座った。
雑居ビルの三階にあるその店は繁華街の少し奥まったところにあり、外から中を伺うことはできない。
二人がいるテーブルはちょうど死角になっており、他の客からも顔は見えない。
その人物は掛けていたサングラスをすっと取り、慧の顔を正面から見据えた。
角倉沙耶。
慧の大学時代の恋人だ。
沙耶は慧をじっと見つめ、その瞳を怒りで歪ませた。
「――――嘘でしょ? 結婚なんて……」
「嘘じゃない」