蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
慧は短く言い、コーヒーを一口飲んだ。
その左手の薬指には銀の指輪が嵌まっている。
指輪を一瞥し、沙耶は頬を引き攣らせた。
「もう……入籍も済ませてるってこと? どうして……っ」
「後報告になったのは謝るよ。でも君にも新しい人がいるだろう?」
「慧……っ!」
「もう、会うのはこれで最後にしたい。それが互いのためだ」
はっきり言った慧の前で、沙耶の瞳がみるみるうちに歪んでいく。
沙耶は髪を振り乱し、叫ぶように言った。
「……私と楠瀬が付き合っているから、当て付けで結婚したの?」
「そうじゃない」
「じゃあどうして、こんなに急に……っ!」