蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
沙耶の叫びに、慧はすっと目を伏せた。
傍から見ればそう見えるのが普通だろう。
だが慧としては、あのタイミングで結婚するしかなかった。
もしタイミングを逃せば、自分は絢乃を永遠に失っていただろう。
「……急ってわけじゃないよ。このタイミングしかなかっただけだ」
「なにそれっ、どういう……!」
「とにかく……。おれはもう君と会うつもりはない。君も彼と幸せになってほしい」
慧は言い、ゆっくりと椅子を立った。
レシートを取り、レジの方へと歩き出す。
背に沙耶の刺すような視線を感じたが、慧は振り返ることなく店を後にした……。
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