蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



駅の改札の方からサングラスの女性が歩み寄ってくることに気付き、絢乃は思わず息を飲んだ。

女性は長い黒髪を靡かせ絢乃の方へと歩いてくる。

その姿を絢乃は一度だけ直に見たことがあった。


去年の年末、慧が滞在していた汐留のホテルにいた、その女性は……。


目を見開いた絢乃の前で、その女性は足を止めた。

サングラスを取り、頭一つ分高い位置からじっと絢乃を見下ろす。

――――角倉沙耶だ。


沙耶は鋭い瞳で絢乃を見据える。

その瞳によぎる憎悪に、絢乃は思わず息を飲んだ。


「……前に一度お会いしたわね? 慧の『妹』さん?」


沙耶の言葉に絢乃は目を見開いた。

……まさか、知られて……。

と思った絢乃の前で、沙耶はその紅い唇を歪めて笑う。


「『妹』だと思ってたけど、『従妹』だったなんてね……。うまく騙してくれたものね」



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