蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
沙耶の言葉に、絢乃は内心でほっと息をついた。
どうやらあのことを知られてはいなかったらしい。
しかしほっとしたのも束の間、沙耶は絢乃に一歩近寄り、腕を組んだ。
その眼によぎる強い憎悪と嫉妬に、絢乃は射られたように固まった。
「ねぇ、あなた。どうやって慧を籠絡したの?」
「…………っ」
「顔って訳でも、体って訳でもなさそうだし……。となると同情かしら?」
沙耶は美しい瞳を歪め、くすくすと笑いながら言う。
絢乃はその場に立ち尽くしたまま沙耶を見上げていた。
その美しい顔にも豊かな躰にも、女としての自信が漲っている。
しかも沙耶は慧と同じ最高学府を出ており、次席で卒業している。
――――全てにおいて、敵わない。
それを一瞬で悟り、絢乃は自分の心が地面にめり込んでいくような気がした。
そんな絢乃を一瞥し、沙耶は厳しい声で続ける。